木地屋と鍛冶屋──熊野百六十年の人模様


試し読み

木地屋と鍛冶屋新刊
熊野百六十年の人模様

桐村 英一郎 著

定価:本体1,200円+税

2022年2月24日刊
A5判並製 / 96頁
ISBN:978-4-909544-23-0


森を渡り歩いた漂泊民と炎を操る孤高の職人
木地屋から身を起こし長者となった小椋長兵衛、疫病退散の題目塔で名を残す木地亀蔵、その製品の評判が海外にまで轟いた新宮鍛冶の大川増蔵。
幕末から近代にかけて、熊野の地で活躍した三人をつなぐ細い糸をたどり、その末裔たちの現在までを追った人間ドラマ。


目次
まえがき

第一話 椎茸長兵衛──祖神の縁起を伝え持つ
第二話 金借り道──庄屋まで一札入れる
第三話 新たな発見──先祖への想いが実る
第四話 大義院──縁ある人をひとまとめに
第五話 賀田村──買った山林で潤う
第六話 木地亀蔵──長兵衛とつながる糸は
第七話 題目塔──疫病退散の願い込め
第八話 新宮鍛冶──入鹿、三輪崎鍛冶が合流
第九話 大川増蔵──新宮の川原町で開業
第十話 キリスト者──尾鷲で接し、新宮で洗礼
第十一話 熊野川町畝畑──出会いの縁の不思議

あとがき


著者
桐村英一郎(きりむら・えいいちろう)

1944年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。朝日新聞入社後、ロンドン駐在、大阪・東京本社経済部長、論説副主幹を務めた。2004年末の定年後、東京を離れて奈良県明日香村に住み、神戸大学客員教授の傍ら古代史を探究。2010年秋から熊野市波田須町で暮らしている。三重県立熊野古道センター理事。熊野に来てからの著書に『熊野鬼伝説』『イザナミの王国 熊野』『古代の禁じられた恋』『熊野からケルトの島へ』『祈りの原風景』『熊野から海神の宮へ』『一遍上人と熊野本宮』『木地屋幻想』『熊野山略記を読む』などがある。

書評・紹介

ほんのうらがわ(編者による刊行エッセイ)

「面」と民間伝承──鬼の面・肉附き面・酒呑童子

「面」と民間伝承新刊
鬼の面・肉附き面・酒呑童子

西座 理恵 著

定価:本体6,800円+税

2022年2月28日刊
A5判上製 / 384頁
ISBN:978-4-909544-24-7


伝承は語る。「鬼面」を手にして魔を払う者は富貴となり、顔から離れずに「肉附き」となった者は鬼と化す──
神事や芸能において重要な役割を担う「面」は、昔話や伝説、お伽草子などの物語に取り入れられ、多彩なバリエーションをもって語られている。
伝承や信仰との相互関係を見据えながら、「面」のもつ豊かな象徴性を明らかにする。


目次
序章 「面」とは何か──信仰・芸能・話の世界
先行研究の紹介

Ⅰ 昔話における「面」
第一章 昔話「肉附き面」と蓮如信仰
第二章 昔話「肉附き面」の背景──近世社会における女性と生活
第三章 昔話「鬼の面」における「鬼面」の呪力
第四章 昔話「鬼の面」における「愚息型」と「孝女型」の考察

Ⅱ 「肉附き面」モチーフの生成と変容
第一章 「肉附き面」モチーフの変容
第二章 白馬村の「七道の面」伝説
第三章 「肉附き面」モチーフの多義性

Ⅲ 「酒呑童子」伝説の変容と「肉附き面」モチーフ
第一章 新潟の「酒呑童子」伝説
第二章 「酒呑童子」になる者──顔の変化から「肉附き面」へ
第三章 「酒呑童子」伝説と鉄砲・金属産業の信仰
第四章 お伽草子『伊吹山酒典童子』の「面」と神事芸能

Ⅳ 近代の文芸に取り入れられた「面」
第一章 芥川龍之介「ひよつとこ」の「面」の解釈

終章 「肉附き面」モチーフの話の周辺

初出一覧
あとがき
索引→公開中


著者
西座理恵(にしざ・りえ)

1975年、大阪府に生まれる。
2002年、早稲田大学文学研究科日本文学専攻修士課程修了。
2021年、國學院大學大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)取得。

書評・紹介

ほんのうらがわ(編者による刊行エッセイ)

接続する文芸学──村上春樹・小川洋子・宮崎駿


試し読み

接続する文芸学新刊
村上春樹・小川洋子・宮崎駿

中村三春 著

定価:本体3,500円+税

2022年2月22日刊
四六判上製 / 352頁
ISBN:978-4-909544-22-3


物語を語り、読むことは、私を私ならざるものに「接続」することである。
語り論、比較文学、イメージ論、アダプテーション論を駆使して、村上春樹『騎士団長殺し』『多崎つくる』『ノルウェイの森』、小川洋子『ホテル・アイリス』『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』、宮崎駿『風の谷のナウシカ』『風立ちぬ』などを論じる。


目次

はしがき

序説 接続する文芸学──語りの〈トランジット〉

Ⅰ 村上春樹
第1章 「壁」は越えられるか──村上春樹の文学における共鳴
第2章 運命・必然・偶然──村上春樹の小説におけるミッシング・リンク
第3章 見果てぬ『ノルウェイの森』──トラン・アン・ユン監督の映画

Ⅱ 小川洋子
第4章 小川洋子と『アンネの日記』──「薬指の標本」『ホテル・アイリス』『猫を抱いて象と泳ぐ』など
第5章 小川洋子と〈大人にならない少年〉たち──チェス小説としての『猫を抱いて象と泳ぐ』
第6章 小川洋子『琥珀のまたたき』と監禁の終わるとき──『アンネの日記』とアール・ブリュットから

Ⅲ 宮崎駿/宮澤賢治
第7章 液状化する身体──『風の谷のナウシカ』の世界
第8章 宮崎駿のアニメーション映画における戦争──『風の谷のナウシカ』から『風立ちぬ』まで
第9章 変移する〈永遠の転校生〉物語──伊藤俊也監督『風の又三郎 ガラスのマント』


あとがき
初出一覧
索引→公開中


著者
中村三春(なかむら・みはる)

1958年岩手県釜石市生まれ。東北大学大学院文学研究科博士後期課程中退。博士(文学)。北海道大学大学院文学研究院教授。日本近代文学・比較文学・表象文化論専攻。
著書に『〈原作〉の記号学 日本文芸の映画的次元』(七月社)、『フィクションの機構』1・2、『新編 言葉の意志 有島武郎と芸術史的転回』、『修辞的モダニズム』、『〈変異する〉日本現代小説』(以上、ひつじ書房)、『係争中の主体 漱石・太宰・賢治』、『花のフラクタル』、『物語の論理学』(以上、翰林書房)、編著に『映画と文学 交響する想像力』(森話社)など。

書評・紹介

  • 2022-04-22「週刊読書人」
    評者:千葉一幹(大東文化大学教授)
  • 2022-07-09「図書新聞」
    評者:高橋由貴(福島大学准教授)

ほんのうらがわ(編者による刊行エッセイ)

電話の声による繋がり/黒田翔大

電話の声による繋がり

黒田翔大(『電話と文学』著者)

 私は電話で通話をする機会がそれほど多くない。スマホやケータイを使うとしても、通話ではなく、メールやインターネット検索などがほとんどである。電話は本来的に声によって繋がるメディアであるが、スマホやケータイには様々な機能が集約されている。通話するという機能は、その多くの機能の一つになっているのである。仕事上電話を頻繁に使うというのでなければ、プライベートで通話をするということが少ない人も多いのではないだろうか。少なくとも私はそうである。

 しかし、個人的にそのような状況が少し変わったように感じている。コロナ禍ということもあり、遠隔授業やテレワークの機会が多くなり、オンライン上で人と接することが多くなった。そのため、オンライン上で人と会話するための環境が構築され、通話をする機会が増加した。そして、友人と直接会うことが制限されているので、通話による繋がりを私は以前よりも求めるようになった。

 ただし、これはZoom、LINE、Discord等のアプリを用いたものなので、従来の電話の通話と全く同列に扱って良いのかは分からない。また、私の場合はスマホやケータイでは内臓のマイク性能に不安があるため、PCとその周辺機材を用いている(これも拘りだすときりがなく、高価なマイクやオーディオインターフェースが欲しくなってしまう)。しかし、いずれにせよカメラをオンにしてビデオ通話をしていない限り、電話による通話と近いものがあるだろう。

 電話がスマホやケータイというように進歩し、通話機能自体は相対化されている。しかし、だからこそ、(本書では扱っていないが)他の機能と比較しやすいという状況になっているのではないか。またコロナ禍ということもあり、通話をするという機会も増えつつあるのではないか。このようなことから、電話で声によって繋がるとはどういうものなのかを考える大きなきっかけになると個人的には考えている。

 本書では触れることはなかったが、執筆中に考えていた事柄をいくつかここで挙げておきたい。

 本書では固定電話を扱っているが、現代では多くの人々がスマホやケータイを持ち歩いている。固定電話からスマホやケータイへと移っていく過程で、自動車電話やショルダーホンがあった。第五章でも言及しているが、推理小説では電話が犯人からの連絡手段として用いられることが多い。自動車電話の登場は、推理小説にも影響を与えており、それがトリックの要素として使われているケースも多々ある。これにポケベルなども加えて、ケータイやスマホの前段階を考察する必要があると考えている。

 また、第三章では「満洲国」における電話に関して扱っているが、台湾や朝鮮といった外地に対する考察も求められるだろう。「満洲国」や外地では言語の問題が出てくる。そのため、電話交換手の育成よりも自動交換機の設置の方が合理的だとされた内地と異なる事情があった。それを考えていくことは、電話研究だけでなく「満洲国」や外地の研究にとっても重要になるのではないかと感じている。

 最後に個人的な感想を記しておく。「あとがき」にも書いているが、本書の中でもとりわけ初めての学会発表と論文掲載をした安岡章太郎『ガラスの靴』を題材として扱った第四章は感慨深い。初めての学会発表では当時の全力を出し、発表した内容がほぼ全てであった。そのため、質疑応答に答える余力は残されていなかった。学部時代の恩師から質疑を受けるが、それに対する十分な答えを明示することは出来ないと瞬時に理解し、何とかその場を凌ぐようなことしか言うことができなかった。これは苦い思い出であると同時に良い思い出だと今では考えている。

 そして、本書も同様に私にとって初めての「本」としての著作物であり、全力は出せたと思う。そのような意味でも個人的には記念になるものだと感じている。今後の研究者としての道を進む上で、きっと特別な糧になると確信している。それに加えて、本書が同分野に幾分かの貢献ができていれば、それ以上の喜びはない。

電話と文学

黒田 翔大 著

2021年10月14日

定価 4,500円+税

電話と文学

電話と文学新刊
声のメディアの近代

黒田 翔大 著

定価:本体4,500円+税

2021年10月14日刊
A5判上製 / 224頁
ISBN:978-4-909544-21-6


「声のメディア」を、文学はどのように描いてきたのか。
電話事業が始まる明治期から、「外地」にまで電話網が拡がった戦時期、家庭や街路に電話が遍在するようになる昭和戦後期までを、作品を論じながら通観し、未来・身体・空間などの視座から、「文化としての電話」を浮かび上がらせる。


目次
序章 文学における電話を問題化する
一 電話に関連するメディア研究
二 文学研究における電話
三 本書の構成

第一章 文学における電話前史──遅塚麗水『電話機』に描かれた電話
一 電話交換手の信頼性
二 電話の利用形態
三 電話交換手に対する不満
四 電話利用者の問題性

第二章 「受話器」という比喩──夏目漱石『彼岸過迄』の敬太郎を通して
一 漱石作品における電話の描写
二 「受話器」としての敬太郎
三 千代子の「受話器」
四 聴き手としての敬太郎

第三章 「満洲国」内における電話の一考察──日向伸夫『第八号転轍器』、牛島春子『福寿草』から
一 空間的距離の短縮と言語の差異
二 日向伸夫『第八号転轍器』
三 牛島春子『福寿草』

第四章 占領期における電話空間──安岡章太郎『ガラスの靴』に描かれた破局
一 電話の同時代状況
二 占領期における電話
三 対面と電話の差異
四 「僕」と悦子のコミュニケーション

第五章 「電話の声」と四号電話機の影響──松本清張『声』とその前後の推理小説
一 四号電話機普及以前の推理小説と「電話の声」
二 四号電話機普及以後の推理小説と「電話の声」
三 「電話の声」が注目された事件
四 松本清張『声』における犯行動機

第六章 電話社会のディストピア──星新一『声の網』に描かれた未来社会
一 家庭における電話の普及
二 プッシュホンの登場と電話サービスの多様化
三 電話によるおしゃべり
四 電話の発達した社会
五 コンピュータによる支配

第七章 電話に付与される場所性──中上健次『十九歳の地図』における脅迫電話
一 一九七〇年代の電話の描写
二 公衆電話と家庭用電話
三 電話によるメディア空間
四 地図の作成
五 場所の自覚

結章 「声のメディア」としての電話
一 本書のまとめ
二 今後の展望

参考文献一覧
初出一覧
あとがき
索引→公開中


著者
黒田 翔大(くろだ・しょうだい)

1990年 兵庫県生まれ
2013年 関西学院大学文学部卒業
2015年 名古屋大学大学院博士前期課程修了
2019年 名古屋大学大学院博士後期課程修了、博士(文学)
聖霊高等学校非常勤講師、トライデント外国語・ホテル・ブライダル専門学校非常勤講師、名古屋大学教育学部附属高等学校非常勤講師、名古屋大学大学院博士研究員、中京学院大学非常勤講師、名古屋芸術大学契約助手などを経て、現在は大阪体育大学非常勤講師、大阪人間科学大学非常勤講師。

書評・紹介

ほんのうらがわ(編者による刊行エッセイ)