全集と詩人イメージ/名木橋忠大

全集と詩人イメージ 名木橋忠大(『立原道造 受容と継承』著者) 立原道造(1914~39)の清純なイメージの形成には、『四季』立原道造追悼号(1939・5)における諸家のエッセイが大きな影響力を持ちました。加えて全集の編...

鷗外、〈心〉をめぐる詩学/新井正人

鷗外、〈心〉をめぐる詩学 新井正人(『鷗外文学の生成と変容』著者) 日本でもっとも有名な近代小説は何か。 こう問われれば、おそらく多くの人が夏目漱石「こゝろ」(1914.4.20-8.11)を挙げることだろう。新潮文庫版...

「海の熊野」から「山の熊野」へ/桐村英一郎

「海の熊野」から「山の熊野」へ 桐村英一郎(『木地屋幻想』著者) 私が今暮らしているのは三重県熊野市波田須町というところです。秦の始皇帝の時代、不老不死の仙薬を求めると船出した徐福がそこに上陸した、という伝承が伝わってい...

沖縄芸能への思いと眼差し/久万田晋

沖縄芸能への思いと眼差し 久万田晋(『沖縄芸能のダイナミズム──創造・表象・越境』編者) 2019年10月31日未明、首里と那覇のちょうど中間に住む私は、サイレンをけたたましく鳴り響かせながら次々と首里方面に向かう消防車...

歴史という「物語」/吉成直樹

歴史という「物語」 吉成直樹(『琉球王国は誰がつくったのか──倭寇と交易の時代』著者) 新たに刊行した『琉球王国は誰がつくったのか──倭寇と交易の時代』は、従来の古琉球史研究に対する批判であるとともに、その批判を踏まえて...

〈ケア小説〉からの眺め/佐々木亜紀子

〈ケア小説〉からの眺め 佐々木亜紀子(『ケアを描く──育児と介護の現代小説』』編者) 『ケアを描く──育児と介護の現代小説』は、2001年12月から始まった研究会の18年間の成果のひとつです。研究会の開催は、100回を超...

吉田綱富について/水野道子

吉田綱富について 水野道子(『現代語訳 童子百物かたり』著者) 『童子百物かたり』の著者の吉田綱富のことについては、すでに前書きや解説で触れていますが、綱富が体験した当時の様子や人柄が偲ばれるところを、著者自身が著わした...

父の子守唄/野本寛一

兵士たちの子守唄 野本寛一(『近代の記憶』著者) 私が菅山村立国民学校(現静岡県牧之原市)に入学したのは昭和一八年(一九四三)のことだった。祖父は没し、父は戦死、伯父は南方に出征中、家をとりしきっていたのは祖母の千代(明...

〈出会い〉の記号学/中村三春

〈出会い〉の記号学 中村三春(『〈原作〉の記号学』著者) かつて仙台で大学の助手をしていた頃、街にヨーロッパ映画を多く上映する映画館ができて、足繁く通っていた。とはいえ、その後地方大学を転々とする身で、本職の文学の方が忙...